Dr.伊藤のひとりごと

なぜ、小児外科医に。

何故ぼくは小児外科医になったのかと考えることがあ る。今から約20年前の医学部6年生のとき医師国家試験に合格してから、自分がどの科に進むかを悩んだ。消化器外科であれば診断も手術もでき内科よりも面 白そうだと考え、最後は消化器外科を選んだ。頭のよい外科医にとって大変失礼な話かもしれないが、外科医は体力勝負で頭を使わなくても良いといわれた(当 時少なくともぼくの周りではそういわれていた)こともこの科を選択した理由のひとつであった。では、何故に小児外科医になったのかであるが、外科医でなけ れば小児科医になりたいと決めていたこと(ぼくは子どもが好きである。ただし、マイケル.Jとは違う意味で好きなのだ!)。次に、汚い話ではあるがぼくは とても匂いに敏感で大人のウンチが苦手であった。この二つが大きな理由である。不思議なことに今では赤ちゃんのウンチは全然気にならず、詰まったウンチを 出すために子どもの肛門に手袋もしないで小指までいれてしまうのはなんでだろう?職業病なのか、それとも鍛えられたからか?


当時の小児外科は人気 がなく(今もそうであるが)、なかなか希望者は少なかった。ぼくも外から小児外科をみるとはきつい、厳しい、汚くはないが金にならない(ほかの外科の先輩 がそう話していた)などの所謂3Kが明らかなところであると思った。スタッフも少なく友人で同期の新人研修医をみると全然自宅に帰れるような気配はなく、 夜の回診(患者さんを診察したり治療したりして見回ってくること)が終わって彼は先輩医師と二人で午後11時過ぎに暗い渡り廊下のベンチでよく自動販売機 で買ったパンと牛乳を食べていた。ぼくは小児外科には関わらないほうがいい、いや関わったらいけないと考え、なるべく小児外科病棟に近づかないようにして いた。しかし、運命のいたずらであろうか。突然、ぼくは生後2日目の先天性十二指腸閉鎖症の赤ちゃん(M.Mちゃん)の担当医になってしまったのである。  次につづく。